Medical Head Americas & Global Head of Liquid Filtration
あらゆる医療機器の開発に関する指針と基準を示す規制の枠組みは絶えず変化し続けており、広大な領域にまたがる医療技術産業は、それに合わせて進化と適応を続けています。その結果、この分野に携わるメドテック企業は、ビジネスの成長と価値創出に影響を及ぼす可能性のある、増加する多くの課題に直面しています。
一方で、楽観的な見方をすれば、そのような課題に対処することは、市場で新しいイノベーションを創出する機会につながります。
医療機器の小型化は近年見られる重要な動向の1つです。これは、セルフケアやモニタリングのニーズの高まりなど主に患者側の要望によるものであり、単品で着用して日常生活を送ることができるように機器の小型化が進みました。
機器の小型化に伴って生じる明らかな課題として、設計者はより狭いスペースにより多くの機能を組み込まなければなりません。その結果、設計品の効率的な製造という難題が下流側で起きています。
マイクロ成形(1)やアディティブ・マニュファクチャリング（AM）などの製造技術の進歩がこのニーズに応えています。補聴器セクターは、カスタム設計、小型化、高機能化がすべて実現された優れた事例の1つです。(2)実際のところ、耳あな型（ITE）補聴器は、アディティブ・マニュファクチャリングを利用して初めて大量生産が可能になったと言っていいでしょう。アディティブ・マニュファクチャリングの機能と経済性が、サイズが小さく、使用者によって形状が異なる補聴器の特徴に合致したことが大きな理由です。
革新的なソリューションを開発するために対処すべきもう1つの重要な課題は、材料の選択です。材料の使用には厳しい規制が課されており、特に既存の製品を対象とするガイドラインの変更は、製造工程と組立工程の再設計を伴う点で難題となります。
医療用途の新しい材料は、必ず厳しい試験と審査を受ける必要があります。したがって、新規材料の化学組成、化学物質安全性評価、確実な組立が可能であるかを把握することは極めて重要です。
しかし、バリューチェーン全体で協力して取り組めば、これは最適な製品を得るための新しい機会をもたらします。同じ目標を持ち、問題点を理解している材料の専門家と協力することで、苦労を軽減し、最も要求の厳しい用途にも適応することができます。
世界各国の規制当局が安全性と懸念材料にますます注目していることは明らかです。この点で、熱可塑性エラストマー（TPE）はPVCの代替材料として関心を集めています。TPEには多くのメリットがあります。熱可塑性樹脂とエラストマーの両方の特性があり、補強剤や安定剤は不要でほぼ調合を行う必要がありません。ゴムとプラスチックの一般的な利点を兼ね備えています。重要な特性の1つは弾性で、引っ張ると元の形状に戻る性質があります。DEHPと可塑剤を含有しないため、可塑剤を添加したPVC管の代替材料として現実的です。TPEの使用を検討している医療機器メーカーは、主にTPE同士を組み立てるほか、TPEと別の素材と組み立てた異種材も視野に入れています。
TPE同士を組み立てるには、非極性の度合いが高いため、非極性溶媒または別の方法による組み立てが必要です。TPEと極性基材（ポリカーボネートやABSなど）を結合するには、溶剤溶着ではうまくいきません。非極性のTPEと極性基材では、極性の差があることで高分子がきちんと結合されません。すべての表面に対応できる1つの普遍的な解決策はありませんが、難接着材の接合を促す革新的な接着剤ソリューションと基材前処理ソリューションは存在します。
接着剤は、異種材の組み立てを可能にするだけでなく、製造コストを低減できる点でも医療機器メーカーから選ばれてきました。溶媒の代わりに接着剤を用いることで、スクラップの削減、サイクル時間の短縮、生産の自動化による業務効率の向上とともに、ライン内での品質管理試験が可能になります。さらに、接着剤は、サステナビリティや安全性の推進にも貢献するものとして採用されています。
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